1996年4月パリから南仏へ、レンタカーを借りて取材スケッチに出かけた。同行はパリ在住の友人が運転、妻と私3人である。スケッチのため―般道で行くことに。1日目の宿泊はパリから216キロあるヴェズレー(VEZELAY)の町にしました。300メートルほどの丘の上には、コンポステラの巡礼路にあるブルゴーニュ風ロマネスク教会があり、ここから見るブルゴーニュ地方の景色は素晴らしい。この教会を見るためと散策をかね朝早くホテルを出た。すると女主人が大きな声をかけ呼んでいるのである。振り向くとこちらに来いとのポーズであった。戻ってみるとなんのその我々がホテル代を払わないでドロンをするのかと勘違いしたようである。
ヴェズレーの町をスケッチに出かけた。美しい柳があり私の心を魅いた。その柳は「1人泣きをする柳」とのことでした。なるほど、だから魅かれたのであると納得。旅行用のトランクは便利である。道に置けばテーブルがわりになり、絵を描く時や食事をする時は非常に便利である。また後片づけはいたって簡単、まとめて収納が出来る。
2000年の秋、来年(21世紀)1月銀座での個展に向け、アルザス地方に取材スケッチに出かけた。パリのガール・ド・レストから列車に乗りナンシーを通過、ナンシーはアール・ヌーヴォー発祥の地でナンシー派美術館などがあるので、ガラス工芸家のエミール・ガレの作品を見たい所ですが、今回はパスしました。ストラスブールには4時間ほどで着き、ここから乗り換え30分ほどでコルマールに到着、この日は長期予約していたキッチン付きのホテル・ポセジュールに宿泊しました。
数日後の朝、アルザス・オーラン県観光局のナデーヌさんがホテルに迎えに来てくれワイン街道に点在している町や村々を案内していただいた。その町や村々など印象に残った場所等を後日時間をかけ、取材スケッチすることをあらかじめ伝えておいたのである。
翌日、朝早くコルマールより列車に乗りツーカイムに出かける。駅はフェシュト川の右岸に、町は左岸にあり、古い長方形の城壁に囲まれています。橋を渡ると、川から大きな鳥が舞い上りフランス門の屋根にある大きな巣に止まった。
「これがコウノトリ」かと、アルザスにはコウノトリが棲息していると聞いていたのですぐに気がついた。日本からパリ、コルマールへと長旅だったため、ほっとする景観でした。日本では特別天然記念物に指定されていたが絶滅してしまった。また姿が丹頂鶴に似ているため松上の鶴として誤って描かれた作品が多数あることを思いだし、なんとなくおかしくなりニャリと笑った。心がほぐれこの日から本格的に取材スケッチに意欲を持って描けるようになっていた。